学校行事と保護者対応が引き起こす「見えない残業」
- Nakanishi Ryo
- 5月17日
- 読了時間: 3分
〜教員の長時間労働は“情熱”で片づけていいのか?〜
こんにちは。元私立学校教員・現社会保険労務士です。
今回は、部活動以外でも深刻な「長時間労働」の一因となっている学校行事や保護者対応について、現場の声をもとに考えてみます。
📅 1. 行事前になると定時退勤が“空気読めない行動”に
文化祭、体育祭、入試説明会──
私立学校において、これらのイベントは学校の“顔”として極めて重要です。
そのため教員も力を入れて取り組みますが、こんな声が聞こえてきます。
「放課後、準備で教室や体育館に残るのは当たり前」「帰宅時間が21時を過ぎることもある」「定時で帰ると“やる気がない”と見られる」
実質的には業務であるにもかかわらず、手当も代休も出ない。
形式上は「自主的な取り組み」とされ、残業扱いされない──これは明らかにおかしな話です。
👪 2. 保護者対応も、立派な“労働”です
私立学校では、保護者との連絡や面談に多くの時間が費やされます。
放課後の三者面談(18:00〜19:00)
クレーム対応で夜間に電話やメール
保護者説明会の資料作成、出席
これらも本来は勤務時間内に処理されるべきものですが、「教員の責任感」によって吸収されてしまっている実態があります。
中には、「家に持ち帰って対応するのが当たり前」とされている学校もあり、完全なサービス残業です。
⚠ 3. 労働法から見たら、かなり“グレー”どころか“ブラック”
労働時間とは「使用者の指揮命令下にある時間」です。
行事準備も、保護者対応も、学校側が必要と判断し、実施を期待しているなら、それはれっきとした労働です。
✅ タイムカードがなくても、働いていれば労働時間✅ 手当や代休がなければ労基法違反の可能性あり✅ “自主的”という名の強制に注意
「熱意」「責任感」「自主性」など、教育現場ではよく聞く美しい言葉。
でも、それで教員の健康が損なわれては本末転倒です。
🛠 4. 教員ができる小さな防衛策
🔹 まずは記録する・勤務時間、面談内容、行事準備の作業時間をメモ・メールやLINEの記録もスクリーンショットで保存
🔹 周囲と共有する・一人で黙って引き受けず、学年・教科チームで分担を・できれば職場の労働組合にも共有を
🔹 上司に相談しておく・「この対応には時間がかかるので残業になります」と明言・改善が難しい場合は、外部相談機関の活用を検討
🧭 5. 最後に──「教育現場を持続可能にする」ために
教員の善意と熱意に頼る働かせ方は、長期的には教育の質を下げます。
準備不足のまま授業を迎える
疲労から生徒指導の対応力が低下
メンタルや体調不良による離職
これでは、どれだけ素晴らしい教育理念があっても、現場は持ちません。
教員の仕事にも**「限界」と「線引き」が必要**です。「自分を守ることは、生徒を守ること」──この視点を忘れずに、無理のない働き方を目指しましょう。