タイムカードなし、形だけの退勤処理──「実態」と「記録」のギャップが教員を苦しめる
- Nakanishi Ryo
- 4月7日
- 読了時間: 3分
こんにちは。私立学校教員・現社会保険労務士です。こちらでは、見聞きしたものをもとに学校現場での労働問題について書いていきます。実在の人物、団体、事件とは一切関係ありません
部活動って教員の仕事の中でも中々難しいですよね・当職は、休日の部活動のための出勤中に交通事故にあり、骨折したものの、休日の部活動は仕事じゃないから労災は下りない!と言われたことがあります。
しかし今日は、「実際には働いているのに、形式上は退勤したことにされる」問題についてです。
1. タイムカードなし、形だけの「退勤」
今回取り上げるケースは、私立学校での教員の勤怠管理です。
タイムカードがなく、17時15分に出勤簿に捺印して退勤扱い。でも実際には18時30分まで、先輩教員に命じられて○○部の部活動指導。
つまり、働いているのに「働いていない」ことにされているのです。
当然、この時間は残業時間にカウントされず、手当も出ない。実態と記録が完全に食い違っている典型例です。
2. これ、労働法的に問題ないの?
結論から言うと、重大な労働法違反にあたる可能性があります。
そもそも**労働時間とは「使用者の指揮命令下にある時間」**を指します。
「〇〇部を指導しろ」という指示がある以上、自由な時間ではありません。
当然、労働時間ですから、**時間外割増賃金(いわゆる残業代)**の支払いが必要です。
つまり、タイムカードや出勤簿にどう書かれていようと、実態が優先されるのです。「退勤したことにしてるから問題ない」という理屈は、労働法では通用しません。
3. どうしてこうなっているのか?
次のような背景があるのかもしれません。
勤怠管理が「教員の自主性」に任されている
部活動は自主的にやっているものだという考え
人件費を抑えたい学校側の思惑
「自分も若いころはそうだった」という先輩教員の慣習
公立学校では、部活動が限定4項目に含まれない
これらが絡み合い、本来払うべき残業代を払わない空気が作られてしまっています。
特に、「部活動は教育活動だから労働じゃない」という論理も未だに根強く、現場の若手教員が犠牲になりやすい構造になっているのです。
4. 教員側ができること
① 自分で記録を取る
タイムカードがなければ、自分で記録を残すしかありません。
日報に活動内容と時間を書く
部活動指導のLINEやメールの指示をスクリーンショット保存
これらはすべて、「実際に働いていた証拠」になります。
② 労働条件について確認・相談する
勤務校の就業規則や労働契約書を確認
できれば労働組合や、外部の労働問題に詳しい機関に相談
学校に直接声を上げるのが難しい場合は、労働基準監督署や弁護士、社労士など第三者の力を借りる選択肢もあります。
5. 最後に──未来の教員を守るために
教員の時間外労働は、個人の善意だけで支え続けられるものではありません。「教育に情熱があるなら無償で働くべき」という考え方は、やがて現場を疲弊させ、子どもたちにも悪い影響を与えます。
働いたら正当に評価される
時間外労働にはきちんと手当が支払われる
そんな当たり前の環境を、私たち自身が作っていかなければなりません。
声を上げること、記録を取ること、相談すること──小さな行動が、未来の教員たちを守る力になります。